【事例紹介|予実管理・クラウドデプロイ・API連携】予実管理をもっと身近に。freee・Boardと連携する事業計画ダッシュボードをクラウドに構築しました
- ccf代表
- 7月1日
- 読了時間: 8分
事業計画は、作成して終わりではありません。本当に重要なのは、計画に対して実績がどのように推移しているのかを継続的に確認し、必要なタイミングで次の打ち手を判断できる状態を作ることです。
一方で、実際の業務では次のような課題が起こりがちです。
事業計画はExcelで管理している
実績データは会計システムに入っている
売上見込みは営業管理システムに登録されている
月次でデータを集めるたびに手作業が発生する
経営判断に必要な数字を確認するまでに時間がかかる
そこで今回、当社では来期事業計画をもとに、予実管理と売上予測を行うWebアプリケーションを構築しました。
この記事で紹介する内容
予実管理
クラウドへのデプロイ
別クラウド製品からのデータ取得
1. 予実管理:計画を“見える化”し、実績との差異を把握する
本プロジェクトの出発点は、来期事業計画を月次で管理できる形に整理することでした。
売上、原価、販管費、営業外損益を月ごとに管理し、損益計算書まで自動集計できる構成にしています。
主な管理項目
売上計画:フロー売上、ストック売上
原価計画:販売原価、保守物販原価
販管費計画:人件費、地代家賃、通信費、旅費交通費、租税公課、その他経費
損益計算書:売上高、売上総利益、営業利益、経常利益
生産性指標:総労働時間、生産性、労務費比率、労務費単価
従来、事業計画はExcelで作成することが多く、作成後の更新や実績比較に手間がかかるケースがありました。今回のWebアプリでは、ブラウザ上で計画値を確認・編集できるようにし、変更内容に応じてP&Lや生産性指標が自動計算されるようにしています。
これにより、単に「売上が足りているか」だけではなく、粗利、販管費、営業利益、経常利益まで含めた利益構造を確認できます。
経営管理では、売上だけを見ていても十分ではありません。売上が計画通りでも、原価や販管費が増えていれば利益は残りません。逆に、売上が多少下振れしていても、粗利率や固定費の管理によって利益水準を維持できる場合もあります。
そのため、本プロジェクトでは「売上」「費用」「利益」「生産性」を一体で見られる予実管理の仕組みを目指しました。
2. freeeの実績データと連携し、月次の差異をすばやく確認
予実管理で特に負担になりやすいのが、実績データの取得と転記です。
本プロジェクトでは、会計freee APIを利用し、月次の損益データを取得できるようにしました。また、API連携が難しい場合でも利用できるように、freeeからエクスポートしたCSVをアップロードして比較する機能も用意しています。
比較画面で確認できること
科目別の計画累計と実績累計
差異金額
進捗率
計画に存在しない実績科目の検出
年間着地見込み
生産性指標の計画・実績比較
特に重要なのは、月次決算後に「どの科目が計画から乖離しているのか」をすばやく把握できる点です。
手作業でExcelに転記していると、確認作業そのものに時間がかかってしまいます。しかし、APIやCSVで実績データを取り込めるようにすることで、確認作業を効率化し、分析や意思決定に時間を使えるようになります。
また、確定済みの実績と残り月の計画を組み合わせることで、年間の着地見込みも確認できます。これにより、期中の早い段階で計画達成に向けた対策を検討しやすくなります。
3. Boardとの連携で、将来の売上予測も可視化
予実管理は、過去の実績を見るだけでは不十分です。今後の売上見込みを把握し、計画に対してどの程度積み上がっているのかを確認することも重要です。
そこで本プロジェクトでは、BoardとのAPI連携も行いました。
Boardに登録されている案件データを取得し、案件ステータスに応じて受注確度を反映した売上予測を計算します。
ステータス | 確率 | 考え方 |
見積中 高 | 70% | 受注可能性が高い案件として加重計算 |
見積中 中 | 40% | 標準的な見込み案件として加重計算 |
見積中 低 | 10% | 受注可能性が低い案件として加重計算 |
受注確定・受注済 | 100% | 確定済み案件として全額反映 |
失注・除外 | 0% | 予測対象外として扱う |
これにより、単純な案件総額ではなく、受注確度を加味した現実的な売上予測を確認できます。
また、案件種別ごとに「フロー売上」「ストック売上」「予測対象外」といった分類や、粗利率の設定も行います。
フロー案件は納品月に売上計上し、ストック案件は契約期間に応じて月次按分することで、より実態に近い予測を作成します。さらに、案件に原価情報がある場合はそれを利用し、ない場合は設定した粗利率をもとに粗利を計算します。
これにより、営業管理システムに登録された案件情報を、経営計画と直接つなげることができます。
特にストック売上は、将来の安定収益に関わる重要な指標です。Boardの案件情報と事業計画を組み合わせることで、ストック売上が計画に対してどの程度積み上がっているのかを継続的に確認できるようになります。
4. クラウドへのデプロイ:社内で共有できるWebアプリへ
今回のアプリケーションは、ローカル環境だけでなく、クラウド上でも利用できるように構成しています。
領域 | 利用技術 |
バックエンド | Python / FastAPI / Uvicorn |
フロントエンド | Vue.js 3 / TypeScript / Vite |
グラフ表示 | Apache ECharts |
コンテナ | Docker |
ローカル開発 | Docker Compose |
デプロイ先 | |
認証 | Microsoft Entra ID / OIDC |
認証プロキシ | oauth2-proxy |
CI/CD | GitHub Actions |
本番環境では、フロントエンドをビルドしたうえで、FastAPIバックエンドとともにDockerコンテナとして実行します。クラウド環境にはfly.ioを利用し、東京リージョンでアプリケーションを稼働させています。
また、計画データや設定情報は永続ボリュームに保存する構成とし、アプリケーションの再デプロイ後も必要なデータを保持できるようにしています。
構成イメージ
ブラウザ
↓ HTTPS
oauth2-proxy
↓ Microsoft Entra ID / OIDC 認証
FastAPI
├─ REST API
└─ SPA 静的ファイル配信
↓
永続ボリューム
└─ 計画データ・設定情報を保存業務データを扱うため、認証も重要です。本プロジェクトでは、Microsoft Entra IDによる認証をoauth2-proxyで実装し、認証済みユーザーのみがアプリケーションにアクセスできる構成にしています。
さらに、GitHub Actionsを利用し、mainブランチへの変更をきっかけにfly.ioへ自動デプロイできるようにしています。これにより、アプリケーションの更新作業を標準化し、継続的な改善を行いやすくしました。
クラウド化によるメリット
社内の関係者が同じ画面を確認できる
ローカルPCに依存せず利用できる
データを永続化できる
認証によりアクセス制御できる
デプロイ手順を標準化できる
継続的に改善しやすい
Excelファイル単体での管理からWebアプリ化・クラウド化することで、事業計画をより日常的に確認できる状態に近づけることができました。
5. 複数のクラウドサービスをつなぎ、経営判断に必要な情報を一元化
今回のプロジェクトでは、複数のクラウドサービスに分散していた情報を、ひとつのダッシュボードで確認できるようにしました。
事業計画データ
↓
Web画面で編集・保存
↓
P&L・生産性指標を自動計算
freee実績データ
↓
APIまたはCSVで取得
↓
計画vs実績を比較
Board案件データ
↓
APIで取得
↓
受注確度を反映した売上・粗利予測を作成会計データはfreee、案件データはBoard、計画データは本アプリケーションで管理します。それぞれのクラウド製品の役割を活かしながら、API連携によって必要な情報を集約しています。
このようにクラウド製品同士を連携させることで、手作業による転記を減らし、より正確かつタイムリーに状況を把握できるようになります。
6. この仕組みで実現できること
計画の見える化
売上、原価、販管費、利益、生産性を月次で確認できます。事業計画をExcelだけで管理するのではなく、Web画面で継続的に確認できるようにしました。
実績との差異分析
freeeから取得した実績データと計画値を比較できます。月次決算後に、どの科目が計画から乖離しているのかを把握しやすくなります。
年間着地見込みの確認
確定済みの実績と残り月の計画を組み合わせることで、年間の着地見込みを確認できます。期中の早い段階で、計画達成に向けた対策を検討できます。
売上予測の精度向上
Board SFAの案件情報を活用し、受注確度を加味した売上予測を作成できます。営業現場の案件情報と経営計画をつなげることで、より実態に近い予測管理が可能になります。
クラウド運用による共有性向上
Webアプリとしてクラウド上にデプロイすることで、関係者が同じ情報を確認できます。認証付きの社内ダッシュボードとして運用できるため、業務データを扱ううえでも安心です。
7. 今後の展望
今回のプロジェクトでは、事業計画、実績比較、売上予測をひとつのWebアプリケーションにまとめました。
今後は、以下のような改善も考えられます。
月次配分への季節変動の反映
複数年度の計画比較
部門別・担当者別の予実管理
Board案件の詳細分析
アラート通知
経営会議用レポートの自動生成
BIツールとの連携
他のクラウドサービスとの追加連携
予実管理は、一度作って終わりではありません。経営環境や営業状況に応じて、継続的に見直していく必要があります。
そのためには、手作業を減らし、必要な情報をすぐに確認できる仕組みが重要です。
まとめ
本プロジェクトでは、来期事業計画をもとに、予実管理と売上予測を行うクラウド型Webアプリケーションを構築しました。
予実管理
事業計画、実績、着地見込み、生産性指標を一元的に確認できるようにしました。
クラウドへのデプロイ
Docker化したWebアプリケーションをfly.ioへデプロイし、Microsoft Entra ID認証付きの社内ダッシュボードとして利用できる構成にしました。
別クラウド製品からのデータ取得
freee APIから会計実績、Board SFA APIから案件情報を取得し、計画との差異分析や売上予測に活用しました。
経営管理において大切なのは、数字を作ることではなく、数字を見ながら意思決定できる状態を作ることです。
今回の仕組みにより、計画・実績・予測をつなげ、よりスピーディーな経営判断を支える基盤を整えることができました。
予実管理・クラウド連携のご相談について
予実管理や経営ダッシュボードの構築、freee・Boardなどのクラウドサービス連携、社内向けWebアプリケーションのクラウド化をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
業務に合わせたデータ連携と可視化により、経営判断を支える仕組みづくりをご支援します。




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